内視鏡内科とは
内視鏡内科とは、胃カメラや大腸カメラと通称される上部消化管内視鏡や下部消化管内視鏡という先進の医療機器を用い、検査・治療を行う診療科です。その診療の対象となるのは、主に消化器系のがん、ポリープ、食道・胃・腸などの炎症、潰瘍などです。
とくにがんは、内視鏡による検査で早期発の可能性が高まり、さらに早期の段階あれば、内視鏡による、体への負担が少ない治療が行えることも少なくありません。当院の内視鏡内科では、一人でも多くの患者様が、内視鏡による診療によって、消化器がんで苦しまれることがないよう、地域で気軽にかかることのできる環境づくりを目指しています。
ちなみに一般に内視鏡というのは、細長いチューブの先にCCDカメラやライト、水や空気を送り込むノズル、処置するための道具を通す鉗子孔などが備わったビデオスコープのことです。これにより鮮明な映像で、消化管内を目視による検査を行うことが可能になります。
内視鏡による検査は、炎症や潰瘍の重症度の診断や、ポリープなどの悪性か良性か、悪性(がん)だった場合はその深さや広がりを診断し、治療方針を決めるのに非常に役立つ他、病変部分の組織の一部を鉗子などで採取し、病理検査を行う場合もありますし、小さなポリープであれば、その場で切除するという治療も可能になります。
さらに内視鏡内科では、胃がんの原因と考えられているピロリ菌の検査・除去も行っていますので、お気軽にご相談ください。
当院では、胃カメラと大腸カメラの同日検査が可能です。詳しくはお問い合わせください。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)について
一般的に胃カメラというのは、上部消化管内視鏡カメラというもので、上部消化管と呼ばれる食道・胃・十二指腸を内視鏡により検査するものです。これらの内腔をビデオスコープで観察し、炎症や潰瘍、ポリープといった疾患の有無やその程度を、目視により検査します。さらに撮影したり、検査の際に病変部分の組織の一部を鉗子などで採取し、病理検査を行ったりする場合もあります。また小さなポリープであれば、その場で切除による治療を行うこともあります。検査時間については、各種処置がない場合、10分~15分程度です。
胃カメラには口から通す経口内視鏡と、鼻から通す経鼻内視鏡があり、患者さんのご要望を踏まえた上、診断により決定いたします。
- 経口内視鏡を実施する際には、患者様のご希望に応じて、「セデーション」を用いた“苦しくない内視鏡検査”も可能です。これは軽い鎮静剤を使用するもので、うとうとした、ほぼ眠っている状況で、ほとんどの人が、気が付いたら検査が終わっていた、と感じています。通常の検査では嘔吐反射が強く、経口内視鏡検査が辛い人でも、受けやすい検査となっています。
- 経鼻内視鏡は、チューブの径が経口内視鏡よりも細いものを使用し、左右どちらかの鼻腔から内視鏡を挿入し、検査します。舌の根にチューブが触れませんので、嘔吐反射が起こりにくく、苦痛が軽減されます。さらに検査中でも医師と会話することが可能です。ただし、チューブを細くするため、経口内視鏡の機器に比べ、画質など若干機能が下がる場合があります。
以下のような症状がある場合、胃カメラによる検査を行います。
- みぞおちや、その周辺に痛みがある
- 胃に不快感があり、胸やけや喉または胸のつかえを感じる
- 吐き気・嘔吐がある
- 吐血をした
- 体重が急激に減少した
- 胃潰瘍、十二指腸潰瘍を繰り返し発症している
- 健康診断などの際、バリウムによる胃の検診で異常を指摘された
- 以下のような方は、症状が無くても定期的な胃カメラ検査を受けるのが良いでしょう。
- 胃がん・食道がんになった家族がいる
- 塩分を多くとる、飲酒や喫煙の習慣がある、ストレスを感じることが多い、など
胃カメラによる検査では、以下のような疾患が発見される場合があります。
- 逆流性食道炎
- 胃炎(急性・慢性)
- 胃アニサキス症
- 胃ポリープ
- 十二指腸潰瘍
- 食道がん
- 食道ポリープ
- 胃潰瘍
- 胃がん など
胃カメラ検査の流れ
胃カメラの検査には、ある程度の事前の準備が必要ですので、まずはご受診いただくか、お電話にてご連絡ください。その際、検査の日時の予約をしていただき、経口内視鏡または経鼻内視鏡を選択します。
患者様の状況によっては、感染症の有無を確認するための検査などが必要な場合もあります。検査に関しては医師および看護師が丁寧に説明いたしますので、疑問点があればご遠慮なくお尋ねください。また服用中の薬があればお知らせください。
検査前日
- 前日の夕食は、なるべく早めに済ませるようにしてください
- アルコールはなるべく控えるようにしてください
- 午後9時を過ぎたら飲食をしないようにしてください。薬についてはご相談ください
検査当日
- 検査が終わるまで、朝食を含め飲食は禁止です(うがいは構いません)
- 胃液分泌が多くなり、検査が行いにくくなりますので、タバコは吸わないでください
- ゆったりとした、リラックスできる服装でご来院ください
経口内視鏡と経鼻内視鏡では、検査機器や手順が異なります。検査当日の経鼻内視鏡と経口内視鏡の大まかな流れは次の通りです。
経口内視鏡による胃カメラの流れ
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1. 咽頭麻酔を行う
液体の麻酔を一定時間、のどに貯めておきます -
2. 検査開始
マウスピースをくわえ、体の左側を下にして横になります。次に口から胃カメラを挿入し、検査が始まります。※セデーション(鎮静剤)をご希望になる方は、ここで鎮静剤を注射し、鎮静剤が効いたのちに検査を行います。 -
3. 胃の内部などを観察
胃をはじめ、食道、十二指腸を観察し、必要があれば組織を採取するなどの処置をします。検査中に口の中で溜まった唾液は、口の横から流すようにします。 -
4. 検査終了
一通り観察を終えたら、検査は終了。検査時間は、処置が無ければ、5~10分程度です。
経鼻内視鏡による胃カメラの流れ
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1. 問診後、消泡剤を飲む
消泡剤で胃の中の泡を除去してきれいにし、観察しやすくします。 -
2. 挿入する方の鼻を選択し、鼻腔に麻酔薬を注入
鼻の通りの良い方を確認して、内視鏡を挿入する方の鼻の奥に麻酔をします。 -
3. ベッドで横向けに寝て内視鏡を挿入、検査開始
麻酔が効いてきたらベッドへ。口は自由に動かせますので、医師らとの会話は可能です。 -
4. 胃の内部などを観察
胃をはじめ、食道、十二指腸を観察し、必要があれば組織を採取。 -
5. 検査終了
一通り観察を終えたら検査は終了。検査時間は、処置が無ければ、5~10分程度です。
検査後の注意点について
- 経鼻内視鏡検査を受けた後は、鼻を強くかまないでください。
- 検査後、1時間程度は飲食を控えてください。とくに経口内視鏡検査を受けた方は、咽頭麻酔が切れるまで、検査終了後1~2時間は飲食を控えてください。
- 組織検査を行った方は、お食事は2時間以上が経過してからにしてください。
- 検査後2~3日は、アルコールや香辛料などの刺激物は控え、消化の良いものを召し上がるようにしてください。
- 胃カメラ施行時に胃に空気を入れて膨らませるので、検査後はお腹が張りますが、次第に楽になりますので、心配する必要はありません。
- セデーション(鎮静剤)による検査を受けた方は、1時間ほど院内にて休息していただきます。車やバイクを運転することは危険ですので(場合によっては自転車も)、公共交通機関あるいはご家族の車にてご来院ください。
大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)について
一般的に大腸カメラというのは、下部消化管内視鏡検査というもので、直腸から盲腸に至る大腸を全体の内腔を、肛門から内視鏡を挿入することで、胃カメラ同様の検査をするものです。同時に、小さなポリープや、初期の大腸がんを切除することも可能となっています。
ちなみに大腸のポリープはその多くが腺腫性ポリープといわれ、基本的には自覚症状はなく、良性のものですが、大腸がんの中には腺腫性ポリープの状態から、がん化するものもあります。腺腫性のポリープが発見された場合、基本的には切除します。大腸カメラにより、大腸がんは予防、治療の可能性が高いがんとなっています。
近年の統計において、日本では死亡数の多いがんの部位で、大腸がんは女性が1位、男性が3位となっており、特に女性に多いがんとなっています。大腸カメラは、この大腸がんの診断および治療には、非常に有効なものとなっています。
以下のような症状がある場合、大腸カメラによる検査を行うのが良いでしょう。
- 便潜血反応で「陽性」との診断を受けた
- 血便がみられている
- 便秘や下痢などの便通異常の症状がある
- 腹痛、腹部膨満感がある
- 貧血を指摘されている
- よく顔色が悪いと言われる
- 急激な体重減少があった
- 大腸ポリープや大腸がんを治療した経験がある など
大腸カメラによる検査では、以下のような疾患が発見される場合があります。
- 大腸ポリープ
- 大腸がん
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
- 大腸憩室症
- 虚血性腸炎 など
下部内視鏡検査(大腸カメラ)の流れ
大腸カメラの検査に際しては、下剤を服用し、腸内をきれいにしておくなど、事前の準備が必要です。また、事前の診察が必要となりますので、まずはご来院いただき、検査の詳細を医師および看護師が丁寧に説明いたします。疑問点があればご遠慮なくお問い合わせください。検査を実施することが決定しましたら、日時をご予約いただき、検査の流れをご説明して、下剤などをお渡しします。
- 抗凝固薬や抗血小板薬(血液をさらさらにする薬)を内服している方は、検査予約時にお知らせください。また糖尿病で血糖降下薬の内服や、インスリンの皮下注射をされている方は、当日は内服、注射をしないようにします。
- 大腸カメラの検査でも、患者様の希望により、セデーション(鎮静剤)を用いた苦痛の少ない検査を行う孔が可能です。
検査前日まで
- 検査予定日の3日前から繊維を多く含む食べ物(※)をなるべく避け、水分を多めにとるようにしてください。
- 前日は検査予約時に購入していただく検査食をとるようにしてください。(検査食以外の食事はとらないでください。お水、お茶などは飲んで構いません)
- 検査予約時にお渡しする下剤を就寝前に内服してください。
- アルコールはなるべく控えるようにしてください。
- 3日前からは以下のような食べ物をお控えください
- タケノコ
- トウモロコシ
- ネギ
- パイナップル などの繊維の硬いもの
- ゴマ
- ピーナッツ
- イチゴ
- トマト などの粒状のもの
- わかめ
- ヒジキ
- 海苔 などの海藻類
- シイタケ
- エノキ
- シメジ などのキノコ類
検査当日
- 朝食はとらないようにしてください。お水、お茶などは飲んで構いません(ただし無糖のもの)。
- 朝、下剤を飲んでいただき、その後、水またはお茶を飲んで(ただし無糖のもの)、排便し、腸内をきれいな状態にしていただきます。
- 服用している薬があれば、当日朝6時までに服用してください。
検査自体の流れ
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1.鎮静剤(セデーション)の投与(セデーションを使用する場合)
前処置室における事前の準備が調ったら、検査衣に着替えて、検査台に横になっていただきます。セデーション(鎮静剤)を用いる場合は、ここで投与します。 -
2.検査開始
内視鏡を肛門から挿入していきます(検査の開始)。検査中は体の向きを変えたり、お腹を押さえることがあります。また腸管を膨らませることもあります。 -
3.腸管内部を観察
内視鏡によって撮影された映像はモニタを通して医師が確認、結腸や直腸などの内腔に病変がないかを調べます。 -
4.生検およびポリープ切除
疑わしい組織があった場合は内視鏡で一部を採取し、顕微鏡で詳細を調べていきます(生検)。またポリープがあり、切除可能な場合は切除します。 -
5.検査終了
大腸の内腔を一通り観察すれば検査は終了です。検査時間は観察のみなら15~30分程度です。
- セデーションによる検査を行った場合は、1時間ほど院内で休息していただきます。
- 休息後、検査後の注意事項をお伝えします。行った処置によって内容が異なります。
ピロリ菌検査・除菌について
ピロリ菌とは正式にヘリコバクター・ピロリ菌といい、このピロリ菌への感染は慢性胃炎を引き起こし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんを引き起こす危険性もあります。日本人はピロリ菌に感染している比率が比較的高く、主に免疫システムが未熟な4歳以下の乳幼児期に感染することが多いと言われています。
ピロリ菌は強い酸性である胃酸の中でも生き延びるため、ウレアーゼという酵素を使って、胃の中の尿素を分解し、アンモニアと二酸化炭素を産出しし、胃酸を中和しようとします。このアンモニアの刺激などで胃の粘膜が傷つきます。加えてピロリ菌から胃を守ろうと、免疫反応が起こり、これにより炎症が発生。その状態が長く続くと慢性胃炎になってしまいます。慢性胃炎を放置しておくと、胃酸や胃液を分泌する組織が減少、胃の粘膜が萎縮して薄くなる「萎縮性胃炎」に進行し、これが胃がんなどに発展するリスクを高めます。
ピロリ菌検査について
ピロリ菌検査については、胃カメラ検査で胃炎が見つかった場合、内視鏡検査または胃X線検査で胃潰瘍・十二指腸潰瘍と診断された場合、突発性血小板減少性紫斑病と診断された場合のいずれかで、保険適用となります。
それ以外では自費(全額自己負担)となってしまいますが、胸やけがする。胃の上部に痛みや不快感があるといった症状が続く場合、また、今は自覚症状がなくても、ご家族に胃がんになった方がいらっしゃる場合など、検査を受けておくことをお勧めします。
当院ではピロリ菌の存在が認められた場合、ピロリ菌の除菌も行っています。自費による検査でピロリ菌が見つかった場合でも、除菌は保険適用で行うことができます。
ピロリ菌検査の方法
ピロリ菌検査には、胃カメラ(上部消化管内視鏡)を用いる方法と、用いない方法があります。
内視鏡を用いる方法
培養法
内視鏡を用いて採取した胃の粘膜をすりつぶし、ピロリ菌の発育しやすい環境において5~7日間観察し、ピロリ菌の有無を調べます。この方法では、そのピロリ菌の除菌に効果のある抗菌薬も同時に調べることができます。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素は、尿素からアンモニアを生じさせます。これを利用し、採取した胃の粘膜に尿素を含んだ試薬を反応させ、色の変化によって判定します。
鏡検法
採取した胃の粘膜の組織標本に、特殊な染色を施し、その後、顕微鏡で直接観察して、ピロリ菌の有無を確認します。
内視鏡を用いない方法
尿素呼気試験
診断薬を内服した状態と、内服しない状態で、それぞれ息を吐いて採取し、呼気の中のピロリ菌の酵素・ウレアーゼによって産出された二酸化炭素の量を測定し、判定します。この方法は、簡易で精度が高いため、主流の検査法となっています。
抗体検査(血液検査)
ピロリ菌が感染したことで作られた、血液中や尿の抗ヘリコバクター・ピロリ抗体を測定し、その値の高さで判定します。
糞便中抗原測定
糞便中にピロリ菌の出す毒素や菌の成分(抗原)の有無を調べ、胃腸内にピロリ菌がいるかどうか判定します。
- 検査法に関しては、現在治療中の病気の有無や、服用中の薬の種類なども関係する場合がありますので、患者様に合わせて選択します。胃カメラ検査をする場合、同時に行うことも可能です。
ピロリ菌除去について
ピロリ菌が発見された場合の除菌では、胃酸の分泌を抑える、ランソプラゾールやオメプラゾールといったプロトンポンプ阻害薬、そして「アモキシシリン」「クラリスロマイシン」のふたつの抗生物質の計3種類の内服薬を用いて除菌を行います。これらを1日2回、7日間連続して服用することで、約70~90%の方が除菌に成功します。
上記の方法で除菌が不成功となった場合、抗生物質を「アモキシシリン」と「メトロニダゾール」に変えて、二次除菌を行います。さらに効果が見られなかった場合は抗生物質の組み合わせを変え、三次除菌を行う場合もあります。ただし、二次除菌までは保険適用ですが、三次除菌以降は保険適用外となります。